文具通販、市場ふくらむ


 
 事務用文具・事務用品を宅配便を通じて事業所に配送する通信販売サービスが注目
 
を集めている。町中にある文具小売店は年々減少しており、卸などに直接発注するほ
 
どの規模もない小規模事業所にとっての不便を解消するのが狙いだ。先行するプラス
 
(東京・文京、今泉嘉久社長)や卸・販売のアサヒ商会(群馬県高崎市、広瀬洋一社
 
長)が洗剤、コーヒー、カップめんまで扱いサービスを充実させているほか、六月に
 
は住友商事の子会社、住商紙パルプ(東京・干代田、駒井康社長)が参入した。
 

 

  中小事業所に照準


店頭より1−2割安

通販業者が代理店を通じて事業所にカタログや注文紙を配布。事業所は会員契約を結 んだうえで、注文用紙に書き込んでファクスで発注する。業者は倉庫で商品をピッキ ングし、宅配便で配送する。本州地域であれば注文を受けた翌日には届く速さと、文 具・事務用品以外にも洗剤やカップめんまで扱うのが特徴。価格も店頭で買う定価よ りおおむね1−2割安い。米国では八○年代後半から大型専門店のオフィスデポ(フ ロリダ州)などが始め、急成長した。米国を迫うように日本国内では現在、大小わせ て十社強が事業を展開している。ターゲットは中小事業所。大手量販店などに押され、 文具小売店は八〇年代前半以降、減少が続いている。一方、民事業所数は増加傾向に あるとみられ、推定七百万軒のうち「九五%は従業員三十人以下の中事業所」プラス という。大口顧客である大企業に対しては小売・納品業者がきま細かな営業を続け直 接配達もするが、中小には行き届かなくなっている。  九三年に始まったプラスの「アスクル」は現在、北海道、九州を除く全国で展開し ている。文具店二千店と代理店契約を結び、顧客開拓を任せている。四月には米クレ ジツトカード大手のアメリカン・エキスプレス・インターナショナルと提携、法人カ ード会員向けに通販を始めた。現在の会員数は約七万社だが、「年内に十万社に達し、 事業が採算ベースに乗る」(アスクル事業推進部)という。

15社と代理店契約

 アサヒ商会の「オフィスエキスプレス」は九二年に始まった。同業者の文具卸・小 売店からは協力を得にくいため、事業所向けに営業している電気製品量販店や事務用 印刷機器メーカーなど他業態の十五社と代理店契約を結んでいる。八月には香川県の 文具卸と同業では初の代理店契約を結んだ。アサヒ商会の自社倉庫に次ぐ二番目の倉 庫を持つことになり、本州、福岡県に加え四国での翌日配送態勢の整った。

  異業種と組み規模拡大

 住商紙パルプは六月、「オフィスコンビニエンス」の名称で始めた。同社は多種多 様な文具の仕入れルートや在庫機能を持たないため、文具通販に乗り出すに当たって メーカーや同業者の複数と交渉したが、手法などの面で折り合わず、結局アサヒ商会 と提携、在庫を委託している。  同社は従来、事業所向けにトイレットパーパーやコピー用紙の通販を手掛けている。 「通販を拡大しようとしているときに文具通販の活発な動きを知った」(消費財取引 推進部)という。紙製品通販の代理店網は地域の運送業者やコメの小売店など八百店。 それに加え、文具通販では、絵画リースのアート・レンタリース・システム(東京・ 渋谷、大谷昭雄会長)と提携、同社の四千以上の代理店や営業員を活用する。通販カ タログにはアート・レンタリースの広告ページを設けた。

販売データ詳細に

住商紙パルプがこの二カ月間に受けた約百社からの問い合わせのうち、文具メーカー からの売り込みが約四十社にのぼり、「関心の高さは予想以上」と言う。プラスでは 新製品のチラシやサンプルを一緒に配送しているうえ、「文具店でPOS(販売時点 情報管理)が普及していないが、通販では販売データが詳細に把握できる」と、メー カー側の利点も強調する。  大手筆記具メーカーの営業企画担当者は「二、三年前は文具通販を軽視していたが、 無視できなくなっている」と話す。文具通販は他業種やメーカー各社を巻き込んで活 発化する可能性が出てきた。                                (小木曽由規)
hirose@bungu.co.jp
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