経済トピックス 〜流通革新はアメリカをモデルに進行〜
 

 

 

1.流通業の将来像はアメリカの現状からの予測可能

  ●アメリカの流通業は、自由な競争の下で優勝劣敗を繰り返しながら発展してき たため、わが国に比べて格段に効率性に優れている。また、戦後の日本の流通 業の発展過程は約20〜30年のタイムラグを経てほぼ例外なくアメリカの形 態を模倣してきた。   ●現在、わが国の流通業は効率化に向けて大規模な変革の渦中にあるが、その方 向性はこれまで同様にアメリカに倣うものとなろう。

2.流通変革のポイントは5つ

  ●アメリカ流通業の現状をもとにわが国の流通業の変革の行方を類推すると、ポ    イントは以下の5点に集約できると思われる。

(1)ショッピングセンター(SC)などワンストップ業態の成長

 ◆働く女性の増加に伴う時間価値の増大や消費のソフト化、サービス化、モータリ   ゼーションの進行などを背景に郊外型SCが続々と建設されている。我が国のS   C化はアメリカに遅れること20年で、現在、単位人工当たりのSC数は同国の   10分の1程度。

(2)ローコスト・オペレーションによる安売り業態の成長

 ◆アメリカのディスカウウントストア(DS)は全小売売上高の13%のシェアを   握り、そのうち6割は総合DS。これに対し、わが国のDSは専門店は中心で売   上高シェアは約4%。今後は脱専門化が進むとみられ、スーパーセンター、コン   ビネーションストア、ホールセールクラブ、ハイパーマートなどフルライイン型   DSの成長が見込まれる。

(3)高級化志向店やコンセプト・ショップなど多様な業態の登場

 ◆所得の向上に伴う基礎的(必需品)需要の充足を背景に、消費者ニーズは多様化   個性化の方向にある。こうしたなか、百貨店の専門店化、高級化やテーマセンタ   ー型、スペシャリティー型SCの増加のほか、ライフスタイルや趣味といった切   り口から客層を絞ったコンセプト・ショップなどの成長が見込まれる。

(4)流通業の大型化と店舗数の減少

 ◆近年、大店法の緩和やメーカーによる流通系列化の見直しが進み、多くの零細小   売業者が整理統合されている。しかし、わが国の零細店舗の過密度は高く、零細   流通再編すなわち卸売業の構造変化を促そう。

(5)流通経路の短縮化

 ◆流通の多段階性を示すW/R比率の低下に示されるように、わが国でも流通経路   の短縮化が進んでいるとみられるが、欧米諸国に比べればその余地は依然として   大きい。流通経路の短縮化は(4)の流通業の大型化と不可欠であり共通の背景   をもつ。ただ、小売業の情報武装が進んだことによりメーカーから流通業へのパ   ワーシフトが起こっていることも重要な要因である。消費者ニーズの多様化・個   性化が進みにつれて小売業の情報ニーズは高まり、消費者からみた「価値」の極   大化を図るため、小売業とメーカーの情報共有化を前提にした流通チャンネル全   体の効率化に取り組む必要が生じる。  ◆これを具体化したものが一般にQR(Quick Response)、ECR(Efficinet Consumer Response)と呼ばれる「製販同盟」。アメリカでは現在、小売業者の   15%がメーカーとの情報共有に基づく商品開発に取り組んででいるが、わが国   でも93年秋頃より、大手スーパー(GMS)、コンビニエンスストア(CVS)   スーパーマーケット(SM)等の大手小売業者が大手卸やメーカーとの間で、P   OS・在庫情報の共有による効率的な販売促進を目指し、製販同盟を構築するケ   ースが相次いでいる。  ◆以上のように、当面は規制緩和や内外価格差解消に向けての動きのなか、SCや   安売り業態の成長が予想されるが、長期的には情報化と協業化による「顧客価値   の創造」を目指すことが流通業の条件となろう。
hirose@bungu.co.jp
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